投稿

論文が出版されました (Kawamura et al. 2025 GRL)

イメージ
共著者として執筆した論文が、Geophysical Research Letters誌より出版されました. 北半球環状モード(NAM)の季節性の将来変化に関する論文です. 論文情報 Kawamura, T.*, Kosaka, Y., Okajima, S., Nakamura, H. (2025). Projected changes of the Northern Annular Mode linked to seasonality of the ENSO teleconnection. Geophysical Research Letters, 52, e2025GL118175.   https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2025GL118175

科研費の申請書のフォント

イメージ
科研費の申請書(研究計画調書)のフォントについて. 概要 本記事は,JSPSの科研費の審査に用いられる,研究計画調書のPDFのフォントを制御できないか?というモチベーションで筆者が試行錯誤して得られた知見に関して,忘れずに残しておくためのメモ書きである. (筆者は基盤or若手研究にしか応募した事がないため,他の種目ではシステムに異なる部分があるかもしれない.少なくとも,挑戦的研究や国際共同研究加速基金ではシステム上で複数のPDFが作成されるとあるので,何かしらの違いがあるのだろう) ※ メモ書きなので勘違いなどあるかもしれません.もし間違いなどがあれば,指摘して頂けると有難いです. 本記事の背景や着想に至った経緯, 核心をなす「問い」 現行のJSPSの科研費電子申請システムでは,応募者向けメニューで研究計画調書の様式(Word)をアップロードし,webシステム上で入力した他の情報とマージして,システム上でPDFの研究計画調書が作成される. 筆者は研究計画調書のWordを「太字+游ゴシック」と「標準+游明朝」で作成していた.これで作成されるPDFをWindowsで見る場合には想定通りの見た目なのだが,iPadで開いた場合に游ゴシック部分がゴシック体に見えず,游明朝とのフォントの違いが分かりにくい(太字であることだけが分かる),という問題があることに気付いた.そして,この解決を図れないか?と思い,今回の調査を行った. (本来であれば,游ゴシックはヒラギノ,游明朝はヒラギノ明朝で代替されると思われるのだが…) 本記事の目的, 独自性と創造性 研究計画調書PDFのフォントに関して,やりたかったことは以下である. ① 研究計画調書内で,太字とそれ以外の違いを際立たせるため,「太字+ゴシック体」と「標準+明朝体」を使い分けたい. ② ①に加えて,審査員がPDFを閲覧する環境として,WindowsとMac OSの双方を想定する必要があるが,研究計画調書のフォントが双方の環境で想定通りの見え方になる事を担保したい.(参考:https://www-shinsei.jsps.go.jp/kaken/usage/usage1.html) これをどうすれば達成できるのかに関する知見を得ることが本記事の目的である. この疑問に答えてくれるような情報を見つけることができなかったので,自分で試行...

論文が出版されました (Okajima et al. 2025 AGU Adv.)

イメージ
筆頭著者として執筆した論文が、AGU Advances誌より出版されました。 2023年夏の東アジアにおける記録的な高温と多湿の複合としての熱波は,同地域の海洋で発生した前例のない極端な高水温状態(海洋熱波)によって大幅に悪化していたことを示す論文です.この海洋熱波は,下向きの短波・長波放射を強めることで,特に日本において,熱波の強度・持続時間を約20%〜50%強めていました. プレスリリース 論文情報 Okajima, S.* , Y. Kosaka, T. Miyasaka, R. Ito (2025): Unprecedented Marine Heatwave Significantly Exacerbated the Record-breaking 2023 East Asian Summer Heatwave, AGU Advances, e2025AV001673 . Journal Site AGU Advancesは,AGUの創立100周に合わせて2019年に創刊された雑誌です. https://fromtheprow.agu.org/agu-launches-influential-new-journal-agu-advances/

コラム紹介 (Hamzehpoor, 2025 Science)

イメージ
How a Ph.D. is like riding a bike 研究論文ではなく,Science誌の"Career"のコラム. このコラムは,筆者の博士課程での経験を自転車に乗る事になぞらえて語るものである. ~~~ 本コラムの筆者は博士課程3年目の時,自分自身の能力に自信をなくし,アカデミアの世界に向いていないのではないか?と不安を感じていた.何ヶ月も抱え込んでいたストレスや疑念を,ついに指導教員のオフィスで打ち明けた. 筆者の指導教員は,筆者の話を辛抱強く聞いた上で, 「あなたは自転車を発明するためにここにいるのではなく,自転車の乗り方を学ぶためにここにいるのだ」 という言葉を返した.この言葉は,筆者の博士課程に対する考え方を根本から変えたという. * 「自転車の乗り方を学ぶ」がもたらした変化 筆者は,家族の中で初めて大学を卒業したため,常に「先頭を走る」プレッシャーを感じていた.そのプレッシャーから,博士課程に進学する際も,学びのために来た学生ではなく,すでに完成された研究者として,自分を見せようとしていた. しかし,博士課程に入ってからは,学業だけでなく,異文化や経済的なストレスにも直面する.1年目の授業はかろうじて合格したものの,2年目と3年目の奨学金申請はことごとく却下された.研究もうまくいかず,革新的なアイデアを出そうと試みても壁にぶつかり続け,他の学生たちから大きく遅れをとっているように感じていたという. 筆者の友人や家族は、これまで成し遂げてきたことを思い出すよう励ましてくれ,大学の専門アドバイザーも,他人と比較するのをやめ,博士課程の候補者であること自体がすでに意味のある成果だと教えてくれた.だがそれでも,自己不信の影は消えなかった. 指導教員との面談の後,筆者は画期的な研究を追求することばかりに焦点を当てていた自分の考えが間違っていたことに気づいた.アカデミアの競争的な環境に気を取られ,博士課程の本来の目的である「研究のやり方」と「研究者として成功する方法」を学ぶことを見失っていたのである. * 博士課程修了,そして次のステップへ この気づきを得て,筆者は指導教員や先輩の助けをより積極的に求めるようになった。アイデアを早期に相談し,フィードバックをもらうことで,研究は進展し始めた.論文発表や生産性へのこだわりが薄れ,成功...

夏セミナー 2025

イメージ
2025/8/22-8/23 @山中湖(レイクロッジヤマナカ) 気象・気候系2研究室合同の夏セミナーで山中湖へ。 新宿から高速バスで山中湖へ,会場は「撫岳荘」バス停から歩いて数分程度. 大学の研修施設という感じの入口 山中湖には東大のセミナーハウス(山中寮 内藤セミナーハウス)もあるが、筑波大のセミナーハウスは場所としてはもう少し東側にある。 レイクロッジヤマナカは大学の研修所!という感じの懐かしい場所。ただ最近はキャンプ場としての営業に力を入れているらしく、今回のタイミングでは偶々営業していなかったが、普段はテントがたくさん張られているらしい。 セミナーのメインは学生1人ずつによる、自身の研究に関連する論文のレビュー+α。 今回は発表者が18人!いたため,かなりの長丁場.様々な研究テーマに関するレビューや方針発表などが行われた. 1件の時間は短いが、合宿形式のおかげで後からいくらでも質問・議論できるというのは、学生にとってとても良いはず。 ロッジの敷地のすぐ脇は湖畔で富士山が良く見えるスポット.山中湖の標高も相まって、セミナーで疲れた頭をリフレッシュしてくれた。 (相対的に気温は低いがそれでも昼は暑かった。甲府は38℃だったので、それが30℃なら相当マシなのだが。エアコンのない部屋は暑い。) 夕暮れ時.夕日がとても綺麗だが富士山は雲の中で見えず. 翌朝に雲のかかっていない富士山を見にリベンジ 2日目は朝食後に解散,その後はレンタルサイクリング+αのアクティビティへ. アクティビティは全員が参加した訳では無かったが,ほとんどのゼミ参加者は午前中に思い思いの方向へ自転車を走らせた. 私は途中のカフェで作業したりしながら山中湖を1周.真面目に走れば1周に1時間はかからないくらいの丁度良いサイズ感. 湖の見えるカフェ(方向的には富士山も見えているがこのタイミングでは雲の中) その後にさらに温泉に行くなどのプランもあったが,申請書の締切や査読などのqueueが色々あったので、サイクリング後はそのままバスで東京へ。 お疲れさまでした。 # 行きも混んでいて多少時間がかかったが,帰りのバスは中央道の事故渋滞で特に滅茶苦茶時間がかかった(昼に出たので本来空いているだろうと思ったのだが). (これを想定しないといけないので正直に言うとバスは好きでなく,研究者という仕事をするなら乗り...

AOGS2025出張

イメージ
 2025/7/28-8/2@シンガポール  Sands Expo & Convention Centreで行われたAOGS2025に参加し、口頭発表(invited)および情報収集を行った。 会場の横はこの形状が有名なマリーナベイサンズホテル.もちろん泊まれないが・・・ 7/28に成田からシンガポール・チャンギ空港へ出発。 出張が続いていたことに加え,シンガポールは案外遠いという話を聞いていたので恐れながらだったが、実搭乗時間は6時間半ほどでキツいとは感じなかった。 入国手続きはスムーズ。税関で止められて焦ったが荷物を機械に通すだけだった。なお出発3日前以内に健康状態の申告を済ませている必要があることに注意。 ホテルの最寄りはジャラン・ベサール駅、チャンギ空港から地下鉄(空港線?)に乗り、エキスポ駅でたdowntown lineに乗り換えて十数駅。MRTはクレジットカードで乗ることができ、運転間隔も数分以下で非常に便利。 現行制度は、近年の円安やインフレによる出費の増加を織り込んだものではない。そのため、宿泊はとにかく安いところを選ぶしかなく、今回はリトルインディアの一角に宿を取った。しかし後から調べてみると、「リトルインディアは宿泊には向かない」という注意喚起のページがいくつも見つかり、現地の人もあまり足を運ばないエリアらしい。 ホテルは「寝るだけなら何とか」という程度で、仕事にはならない。悲しいが,仕方がない。机まわりでは小さな虫(ノミのようなもの。いわゆるベッドバグではなさそう)が湧いており、部屋にはペットボトルの水もない。スタッフによると「飲める水が出る蛇口がある」とのことだったが、学会中に体調を崩すわけにもいかず,試す気にはなれず。 ……これが現実である.. 初日は到着が夜だったので、とりあえず夕飯を食べて飲み水を調達するために街へ。リトルインディアの奥は暗くなってから一人で歩くにはなあ、という感じだったので、ベンクーレン通り沿いに西に歩いてモール的な所を散策。全ての店が電気屋のビル(日本でいうラジオ会館みたいな感じ)もありつつ、屋台(ホーカー)が集まった建物を見つけたのでそこで夕食を取った。 ブギスストリートに程近いホーカーセンター(アルバートセンター) ホーカーで食べた麺.安い(4SGD) ここ数年、海外出張では毎回予算繰り...

BACO-25出張

イメージ
2025/7/21-7/25@BEXCO(プサン) BACO-25 (IAMAS-IACS-IAPSO Joint Assembly)に参加し,口頭発表2件を行うと共に,情報収集・議論等を行った. 7/20朝に釜山へ。福岡からフェリーというより早い方法もあったのだが、家で用事を済ませたいのと出張手続きが煩雑になりそうなので一度帰京した。 釜山行は羽田発がないので成田から。2023/06に釜山に来た時は12:45発の大韓航空に乗ったのだが今回は見つからなかった?のでJIN AIR運行便(10:50発)を初めて使った。 釜山に着いたのは13時前だったが、韓国の例に漏れず入国審査に時間がかかる。入国審査が済んだのは2時前だったが、後ろの席の人はもっと掛かったのではないだろうか。30分くらいでブーブー言っている人が多かったのは初韓国の日本人が多いということか。韓国に来るときは入国審査に1時間以上掛かることを想定し、出来るだけ前方の席を取るべきである。 釜山も空港から市内へは電車で行ける。1号線に乗ってSasangで2号線に乗り換えJangsan行きへ。空港からBEXCO駅までは1時間くらい。途中の川を渡るところで、川縁が水浸しになっていた。前の週に韓国では大雨が降っており、釜山周辺も直前まで大雨に見舞われていたのだろう。 空港~Sasangの間の川沿い.浸水の後が. BECOには2023年4月にも来たことがあり二度目.大きな建物がいくつもあり,入口がどこか分からない. BEXCO ちなみにBEXCOには地下に飲食店が何件もあるほか,コンビニやカフェ,コーヒースタンドがある. 今回は南岸低気圧(Kuroshio cyclone)の季節性に関する研究(Okajima et al. 2025a JClim)と,2023年夏の海洋熱波と大気の熱波の複合に関する研究(Okajima et al. 2025b accepted)の発表を行った.後者もなかなかに手応えがあった.A3フォーサイト事業のWGの活動に関する議論も少し出来た.また何人かの韓国の知り合いと久々に会うことも出来たのも良かった. 会場の様子(朝のセッション開始前なので人がまばら) 1件目の発表を行った1日目の"[M05] Advances in Dynamic Meteorology"では,体調不良...

コメンタリー紹介 (Goda et al. 2025 Nature)

イメージ
Japan can be a science heavyweight once more — if it rethinks funding 研究論文ではなく,Nature誌のCommentの記事. 本稿では,衰退した日本の科学技術力再興のために何が必要かを述べている.特に,日本の研究機関に所属する科学者・技術者の視点から,政府および資金配分機関に対し,学際的研究支援の強化を求める5つの提言を行っている. 日本の科学技術力について語る前に一読するに値する記事だと思う. ~~~ 日本の科学技術力再興への提言:学際的研究への資金配分改革の必要性 CRISPR遺伝子編集技術やAIによるタンパク質構造予測など、現代の大きなイノベーションは学際的研究から生まれている。気候変動、生物多様性の損失、健康格差といった地球規模の課題解決も、多様な分野を繋ぐ洞察に依存。しかし、多くの国で学際的研究は依然として軽視されがちである。 現状の課題:日本の学際的研究支援の遅れ 英国や米国などが学際的研究への資金配分を強化しているのに対し、日本の資金配分機関は依然として工学や化学といった個別の専門分野内の研究を主に支援している。この結果、日本における学際的研究の資金は著しく不足し、画期的な成果を生み出す機会を逸していると指摘されている。過去20年で、世界の引用論文トップ10%に占める日本の割合は6%から2%へと低下しており、研究開発力の低下は明白である。 変革への5つの提言 ①「プロジェクト」から「人」への資金配分転換 日本の資金配分機関は、プロジェクト単位の支援から、才能ある研究者個人への支援へと軸足を移すべきである。ハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)のインベスティゲーター・プログラムやドイツのマックス・プランク協会のモデルは、長期的な視点での研究者支援が画期的な発見に繋がることを示している。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の成功事例は、研究者中心の資金配分が日本でも有効であることを証明している。OISTは、学際的連携を重視し、教員への柔軟なコアファンド提供、共用施設・技術スタッフの無償利用などを通じ、Nature Indexで国内トップの研究機関と評価されているのである。 ②ハイリスク・ハイインパクトなプロジェクトへの挑戦 学際的研究はリスクが高いと見なされがちであるが、米国防高等研究...

Mid-latitude Atmosphere-Ocean-Ecosystem Interactions: Processes, Predictability, and Habitability 出張

イメージ
2025/7/15-7/18@九大伊都キャンパス 学術変革領域「ハビタブル日本」の国際ワークショップ "Mid-latitude Atmosphere-Ocean-Ecosystem Interactions: Processes, Predictability, and Habitability"に参加し、発表を行うとともに、情報収集・議論・交流を行った。 実は九大に行くのはこれが初めて.2023年にhotspot2のイベントがあったが,US CLIVARのワークショップに参加していたので不参加だった. ロゴが早速たくさん使われていて嬉しい 会場より(1日目開始前) 伊都キャンパスの雰囲気 PayPayドームにて 3日間で口頭発表セッション・ポスターセッションに加えてコーヒーブレイク・1日目夜のレセプションでの交流、また2日目夜にはいくつかのグループに分かれてディナーの場を設けていただいた。(ディナーの後にさらに一部の方でカラオケに行きました) 前日には交流イベントとしてみずほPayPayドームで野球を観戦。海外からの参加者は、野球を観るのが初めてという方も多かったが、とても良い交流イベントでした。(私は阪神ファンなので平和な気持ちで観られました) SOC/LOCの皆様、ありがとうございました。 ワークショップ(と前日の野球観戦)の様子はこちらにも掲載されています。 https://hotspot3.aori.u-tokyo.ac.jp/news/activity/2025/07152230213826/ https://hotspot3.aori.u-tokyo.ac.jp/news/activity/2025/07170737433858/ https://hotspot3.aori.u-tokyo.ac.jp/news/activity/2025/07180011413866/ https://hotspot3.aori.u-tokyo.ac.jp/news/activity/2025/07201151403871/

Julie Arblasterさんセミナー

イメージ
2025/07/10 @筑波大学 Monash大学のJulie Arblaster教授に筑波大を訪問していただき,セミナーを行っていただくとともに,大気海洋相互作用に関するミニワークショップを行った. セミナーはTropical to extratropical interactions using a hierarchy of model experimentsというタイトルで,多様な時間スケールの現象や変動に対して様々なアプローチの数値実験を行った研究成果について話していただきました. どうもありがとうございました!

論文が出版されました (Koike et al. 2025 PEPS)

イメージ
共著者として執筆した論文が、Progress in Earth and Planetary Science誌より出版されました. 2022年夏に北海道東方沖で行われた,航空機と調査船を組み合わせた観測キャンペーンに関するオーバービュー論文です.エアロゾルと雲の特性の詳細な調査が行われました. 論文情報 Koike, M., Y. Kawai, K. Adachi, H. Aiki, Y. Kanaya, H. Kawai, K. Kita, F. Kondo, T. Koshiro, H. Matsui, T. Miyakawa, A. Miyamoto, T. Miyasaka, Y. Miyazaki, M, Mochida, T. Mori, N. Moteki, T. Murayama, H. Nakamura, S. Ohata, E. Oka,  S. Okajima , Y. Tobo, S. Sekizawa, A. Yoshida (2025): Integrated aircraft and research vessel observational studies of aerosols and clouds in summer over the western North Pacific,  Progress in Earth and Planetary Science , 12, 50.  https://doi.org/10.1186/s40645-025-00719-1

コラム紹介 (Ulker, 2025 Nature)

イメージ
How I honed my biopharma dealmaking and business-development skills after my PhD 研究論文ではなく,Nature誌の"Career Q&A"のコラム. 本稿では,フィリッポ・ムリナッチ氏の経歴をベースに,博士号取得者がバイオ医薬品業界で最高事業責任者(CBO)として成功を収めるためのキャリアパス,CBOの職務,ならびに必要とされるスキルセットについて概説している. ~~~ まずムリナッチ氏の簡単な経歴について. ムナリッチ氏は化学で修士号を取得後,バイオテクノロジー企業での研究員としての経験を経て,製薬科学の博士課程に進学し専門性を深めた.博士号取得後,MBAを取得し,ビジネス戦略・マーケティング・財務等の知識を習得. その後,ロシュ社にてグローバル事業開発,ライセンス業務に従事.特に生物学的製剤とオンコロジー分野で経験を積んだ.トランザクション業務を通じて,科学的知識に加え,交渉術,ネットワーキング,法務知識等のソフトスキルを実務で習得.ディールメイキングに関するスキルセットを構築していった. フィロジェン社でライセンサー側の事業開発・ライセンス責任者を務めた後,バシリア・ファーマ社を経て,2022年にアラーリス・バイオテック社のCBOに就任.同社は2023年,大鵬薬品工業に大型買収された. バイオテクノロジー企業のCBOの職務 CBOは多岐にわたる職責を担う. 企業代表 :製薬業界に対する企業の顔としての役割. 資金調達・提携交渉 :外部投資家の誘致,大手製薬会社との提携交渉(特に財務・法務面)の主導. 情報管理 :データルーム内の機密情報(財務・法務文書、各種データ)の維持・管理. その他 :デューデリジェンス対応等. 成功に必要なスキル ムリナッチ氏は以下のスキルセットの重要性を指摘している. 専門スキル:科学的知識,業界知識 ビジネススキル:戦略,マーケティング,財務,法務 ソフトスキル:交渉術,ネットワーキング,自己主張力,他者視点での思考力 これらのスキルは,学術的プログラムに加え,実務経験(OJT),特に多様な専門性を持つ同僚との協働を通じて培われる. 若手研究者への提言 同様のキャリアを目指す若手研究者に対し,以下の点が重要であると助言している. 交...

水月湖出張

イメージ
2025/6/27-28 @福井県 水月湖(若狭町) 現在,学術変革領域研究(A)『「暴れる気候」と人類の過去・現在・未来』に関連して水月湖で年縞堆積物の採掘を行っている.その現場を訪問し,採掘・コアの処理の見学と年縞データ等を用いた研究の今後の方向性に関する議論を行った. 6/27の朝に東京を発って,三方駅から水月湖へ. 採掘現場は水月湖の中(上?)で,採れたコアを処理するのは湖のほとりの若狭町レイククルーズの駐車場に建てられたプレハブ.採掘期間にとても多くの訪問者がいるそうで,この日は別の知り合いの方にも会った. まずは採掘現場を訪問させていただいた.グアテマラでは採掘現場に行った日があいにく休みの日だったので,今回ようやく採掘が行われている様子を見ることができた. 掘削現場のフロート.今回はなんと2階建て 西部試錐工業の方々の動きがスムーズ過ぎてびっくりする.見ていて気持ちいい. フロートから見た,フロートに向かってくる方々を乗せたボート その後,コアの処理を見学させていただいた. パイプから土を抜き出す 取り出した土を丁寧にかつ手際よく処理. その日は近くの旅館に宿泊.水月湖だけでなく,三方五湖はのどかで良いところですね. 翌28日はオーストラリア(アデレード大学)からの訪問の方がいたので,まずは中川代表がコアの処理を改めて解説. この日の掘削で用いられたサンプラーの解説を行う中川代表 この日は偶然Bjerknes Centreのシャツを着ていたのだが,アデレード大学から来られた方(Jonathan Tylerさん)もベルゲン大に滞在していたことがあるらしく,話が盛り上がった. その後,年縞データ等を用いた研究の今後の方向性に関する議論を行った.気候モデルの長期ランを使って何ができそうか,という資料を作っていったので,それを見せつつ有意義な議論が出来た(お忙しいところ,北場さんありがとうございました!). 休日限定の観光用バスに乗って駅へ.その日のうちに帰京. おつかれさまでした.採掘現場のみなさま,大変ありがとうございました.

Stormtracks 2025 workshop出張 +α

イメージ
2025/6/12-6/21 @ローゼンダール&ベルゲン (ノルウェー) LMD@フランスへの出張からのつづき。 6/12に夜9時頃の便でCDGからベルゲンへ。ベルゲンの空港に23時台に着き,宿泊先へ。この日は寝るだけ. 13-14日はベルゲン大でワークショップ。研究の進捗などについて発表するとともに議論、交流を深めた。久々にフロイエンにも登った。 フロイエンから。いつもの風景感。おそらくベルゲンに来るのは7-8回目 ミニワークショップの風景 ノルウェーで夜にレストランでお酒を飲もうとすると物凄く高い(ビール1杯が最低2000円弱くらいする,しかもノルウェークローネは日本円に対してあまり高くなっていない通貨である・・・)。そしてスーパーではアルコール4.7%以下のお酒しか買えず平日の8時、土曜の6時までしか売られていない。それ以上強い酒は専売公社みたいなところ(vinmonopolet)に行く必要がある。 なので、免税でお酒が買える空港の免税店にはお酒を買い込む人が溢れている(深夜でも買えるというのも大きい)。しかし免税の範囲には制限があり、20%程度以上のお酒(要は蒸留酒)を買わない場合には4.7%以上(ワインなど)が3Lまで、4.7%以下(ビールやサイダーなど)が6缶まで(3L)と決まっている。やたら空港の免税店で3Lのパックワインを見かけるのはどうやらこれが理由らしい。 15日から20日はstormtracks2025 ( webpage )。 stormtrack workshopは今回で4回目。前回は3年前にフランスのオレロン島で開催され,私も参加した。 15日午前にベルゲンからフェリーに乗ってRosendalに移動。ホテルはとても素晴らしいロケーションで、食事もとても美味しかった。魚が多すぎると一部に不評?だったようだが、私としては「こんなに魚を食べさせてくれるのか」とむしろ大満足だった。食事は本当にうまかった。お腹にも明らかに良いしね。 Rosendal Fjordhotel。フェリーより この会議は5日間にわたって発表+ポスター+ディスカッションに、寝食も同じ場所という前回と似たタフなスタイル。博士の時の「アウェイ出張」にピッタリである。 学会会場。割とパンパン 食堂 発表風景(私) ローゼンダールは小さい街で周辺を山と小川に囲まれており、遅...